敵を知り己を知れば百戦危うからず
孫子の言葉に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という一節があります。「向かう相手のことをよく知り、自分の実力を正しく知っていれば百回戦っても負けることはない。」ということを意味しています。「敵情を正しく把握せよ」ということです。
「教師は授業で勝負する」と言われるように、授業が勝負であるならば、勝負に勝つためには、相手のことをよく知らなければなりません。教師にとって、相手とは子どもたちです。
「子どもの興味・関心をひく授業」をするには、子どもたちの興味・関心は何か。また、子どもたちの実態をよく把握しておくことが大切です。子どもたちと関わっていれば徐々にわかってきますが、それでは遅いのです。また、教師は多人数の子どもたちが相手です。
そこで、アンケートを実施して、子どもたちの実態を把握しておきます。アンケート結果は、エクセル等でまとめておくとよいでしょう。以下に項目をあげておきますので参考にしてください。
- 塾、家庭教師、習い事
- 睡眠時間
- 朝食を食べて登校しているか。
- 好きなタレント
- 好きなアニメ
- 好きなゲーム
- よく見るテレビ番組
- スマホの使用時間
- 特技(得意なこと)
- 先生の第一印象
子どもたちの実態が把握できたら、授業に生かしていきます。例えば、子どもたちに人気のあるキャラクターの絵を描いて、提示します。特技に「絵を描くこと」がある子どもがいれば、子どもに絵を描いてもらいましょう。先生の描いた絵よりも、同年代の子が描いた絵のほうがウケます。
アンケートに「耳を動かせる」と書いた子どもがいました。英語で「Can you ~?」を導入したときに数名の子どもたちに” Can you move your ears?” と質問し、”No, I can’t.” と答えさせた後、その子にも同じ質問をしました。”Yes, I can.”の声に注目が集まりました。実際に耳を動かしてもらいました。子どもたちは、can の意味を実感しました。
アンケートは、授業ばかりでなく、子ども理解にも役立ちます。消極的な子どもとも、アンケートを接点にコミュニケーションをとることもできます。手間はかかりますが、見返りも大きいです。
大人が楽しいものは、子どもだって楽しい
「こんな授業ではつまらないだろうな。」と思いながら授業をやっているときは、その通りに子どもたちはつまらない授業だと感じています。逆に、教師が楽しんで授業をやっているときは、子どもたちも楽しいはずです。大人が面白いと感じるものは子どもだって面白いと思うし、大人が楽しいものは子どもだって楽しいものです。
そこで、日頃から授業のネタ集めをしましょう。日常の会話やテレビ、映画、アニメ、ネットなどで、あなたが面白いと感じたものをストックしておきましょう。また、ふとアイデアが浮かんだときもすかさずメモしておきましょう。良いアイデアであればあるほどすぐ消えてしまい、後から思い出せないものです。ポストイットやスマホにメモしておくとよいでしょう。東急ハンズ等でおもしろいグッズが手に入ることもあります。
よいネタを集めるためには、先々どのような内容の授業をするのか知っておく必要があります。授業の直前になってどうしようかと考えても、いいアイデアはそう思いつくものではありません。これから先どのような授業をやるのか知っていれば、面白いものに出会ったとき、「これは、授業に使えそうだな。」と潜在意識にひっかかってきます。その場限りの授業をしていると、よいネタに出会っても、気づかずに過ぎていってしまいます。子どもにウケた授業は、ウケたところを記録しておきましょう。これを繰り返すと大きな資産形成をすることになります。記録したものは心の中で発酵醸成させ、さらに活用していきましょう。
導入は授業の命だ!
授業の導入とは一言で言うと「子どもたちのベクトルをそろえること」です。子どもたちの意識を授業に向かわせることです。子どもたちの意識がバラバラでは、よい展開の授業になるはずがありません。導入は、教師の腕の見せ所です。工夫が必要です。
一流の人は工夫をしています。黒沢明監督は、激しい雨の描写で、水に砂糖を入れ、質量を重くして降らせたそうです。新海誠監督も巫女の舞の描写で、実際に歌舞伎役者の舞をビデオに撮り、そこからアニメにおこしています。工夫をするには、アイデアが必要です。そのアイデアのためにも、日頃のネタ集めの意識を持つことが大切です。
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